明日開催されるコンサート「モダン・アートと融合する若き作曲家たち」で演奏される、新曲「画家キリオカマキの絵画作品による6つのシナスタジア」のプログラムノートを公開します。
画家キリオカマキ氏の卓越した色彩感によるモダン・アートから、作曲家たちが見出したものとは…?
画家キリオカマキの絵画作品による 6つのシナスタジア (新曲初演)
永井秀和:第4曲 モティーフ絵画 / 獅子舞
作曲者曰く、水色が[E]、緑が[Fis]、赤が[A]、金や銀は[H]に「聴こえる」 そうだ。音と色に関する強い共感覚は、この絵画作品の中にある全ての要素を音楽に変換している。偶然にも上記の[E][Fis][A][H]の和音は、雅楽の笙(ショウ)で頻繁に使われる和音と酷似すると言うから驚きである。
作曲者の表現はこれに止まらず、ピアノによる当たり鉦(アタリガネ)の 模倣。オーボエによる篳篥(ヒチリキ)の模倣。コントラバスによる楽太鼓の模倣と、全体から作曲テーマでもある「和」が聴こえてくる。その全てを持って、獅子舞が祭りに出現し、その力強い歩みを進め、また去って行くまでの様子が描かれている。
●絵画作品名:『獅子舞』(桐枠・麻布カンヴァス/アクリル絵具)
●制作年:2015年 ●サイズ:F4(24.2cm×33.3cm)
宮下亮明:第5曲 モティーフ絵画 / トゥイガ トゥイガ
舞台をアフリカのジャングルとし、それが曲全体のモティーフとなっている。弦楽器のハーモニクスによって沼や池、そして 熱帯の熱い風が表され、トランペットやオーボエによって野生が表現される。
この絵画の中の2頭のキリンが、偶然によってこの場に居るように、自然界は、人間が整合性や秩序を感じられる物事は少なく、全て偶然によって成りなっているように見える。この曲もまた、偶然に支配されている。もし再演される事があったとして、この曲だけはその度に姿を変えるのである。作曲者は、それら全ての意味を込めて、この曲のテーマを 「出会い」であるとした。
●絵画作品名:『トゥイガ・トゥイガ』(桐枠・麻布カンヴァス/アクリル絵具)
●制作年:2015年 ●サイズ:F12(50cm×60.6cm)
永井秀和:第6曲 モティーフ絵画 / 蓮の旋律、猫の唄
テーマは「ある猫の一生」である。川のせせらぎが聴こえる中、蓮が”穴ぼこ”の旋律を奏でる事でこの曲は始まる。オーボエの音に導かれたある猫がこの世に誕生すると、それまで蓮が奏でていた旋律は“穴ぼこ”の無い、猫の唄へと変わる。
拍子が変化すると、少しだけ成長した猫の自由気ままな生活が垣間見える。まだまだ若い猫の様子は不完全な和音に表れ、ちょっとしたトラブルによって拍子の輪郭は崩れてしまう。しかし猫は、気にする様子もなく鳥たちと戯れ、遊び疲れたら家に戻って寝てしまう。
速度や調性の変化と共に、猫はさらに成長する。和音が安定し、完全なものになった事がそれを感じさせ、今までは遊び相手だった鳥たちも、遠くから鳴き声が聴こえるだけになる。
音の数は少しずつ減少し、最期の時を迎えた猫は、ピアノによって鐘の音が鳴らされると共に 事切れる。猫が一生の中で見た、様々な記憶が混ざり合い、ゆっくりと猫の魂は昇天していく。曲の最後に、また川のせせらぎが聴こえ、また新たな命が生まれてくる。絵画の中、行き先の描かれていない川からは、輪廻転生の概念が感じられる。と作曲者は語る。
●絵画作品名:『蓮の旋律、猫の唄』(桐枠・麻布カンヴァス/アクリル絵具)
●制作年:2016年 ●サイズ:F80(145.5cm×112cm)
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<モダン・アートと融合する若き作曲家たち>
【日時・場所】 2017年8月21日 19:00開演(18:30開場) めぐろパーシモンホール 小ホール
【参加する作曲家たち】 永井秀和 (東京藝術大学作曲科 卒業) 伊藤栄乃 (桐朋学園大学作曲科3年次 在学中) 宮下亮明 (桐朋学園大学作曲科3年次 在学中)
【参加する画家】 キリオカマキ
【演奏する曲目】 ●永井秀和:Romantic Ballade ●伊藤栄乃:Le metre pour changer ●宮下亮明:Collage 16to@ ●合作:画家キリオカマキの絵画作品による6つのシナスタジア (新曲初演)
他
【入場料】 全席自由 2,000円
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https://ssl.form-mailer.jp/fms/98f16abb509605
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